2006年09月24日

治療と管理

この週末はボラの合宿に行ってきました。

ボラは知的障害者の方と関わるもので、今回は知的障害者の方と関わらないボラだけの研修という合宿でした。そこでは児童精神科医の方から自閉症についての講義を聞きました。基本的に知っていることばかりだったのですが、久しぶりにTEACCHプログラムのビデオを見ました。
TEACCHとかを見て毎回考えてしまうのは治療と管理の違いです(実際問題全ての治療は管理とつながっていると思いますが)。自閉症の子はコミュニケーションを言葉ですることが難しいので、他の方法でコミュニケーションを取ることができるようになり作業もできて将来社会参加することができるようになるように。とても素晴らしいことです。しかし、ここにはどんな人間も社会参加して働くことが当然という人間観があると思うのです。健康な人と同じように、別の形ででも社会参加できるようにすること。管理的な要素がどうしても潜んでいるような気がします。
TEACCHプログラムも日本で広まっていますが、アメリカ(ノースカロライナ州)でTEACCHが始まったのにはプラグマティズムとプロテスタンティズムがもともとあるのが大きいような気がします。実利的であり、なおかつ働かざるもの食うべからず。日本は比較すると社会で生かそうとするよりも家族で抱えるというような文化がもともとあるような気がします。家族で抱えればあまり管理は関係ないでしょう。家族だから認められるということがあるような気がします。ただ家族の負担がとてつもなく重くなることと家族がいなくなってしまった時に本人が生きていけるのかという問題がありますが。日本もだんだん家族から社会への比重が重くなってきたと思います(介護保険しかり)。ただ社会で生きるということは他の構成員に迷惑をかけないようにするということで、やはり管理的な要素が存在するようになってきてしまいます(極端な話、教育自体がある種の管理・洗脳です)。
結局社会で私達自身が生きている以上、管理という視点は排除することができないものですが、自分が行っていることに管理的要素が潜んでいることに気付いていること、なぜ自分はそのような管理的行動を行っているのかということを考えていくことがおそらく重要なのだと思います。正解の答えなんかでないしね。自分自身だけの答え、真実を持つことが大切。

児童精神科医の先生とは他にも精神療法のことや心理士のことについて語り合いました。フランクなとてもいい先生で、今度先生の診療に陪席させて頂けることになりました。臨床は実践知なので直接観察ができることはとても役立つでしょう。楽しみです。
posted by hiro at 18:13| Comment(9) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
心理学科で一緒だった石幡です。お久しぶり。お元気かしら?
ずっとROMってたんだけど、コメントしてみます。

「家族で抱えればあまり管理は関係ない」
うん。タイでは、自閉症の療育があまり行われていないようで、
ある程度お金がある家の自閉症の子は、家の中で
お世話係に囲まれて過ごしているという話を聞きました。

でも、そういう社会に「どんな人間も社会参加して働くことが
当然という人間観」がないかというとそうではなくて、
社会参加して働くことができないから、彼らは「人間じゃない」わけ。
だから、自閉症の子どもを持った親は、子どもを隠すようにして生活している、と。
Posted by あい at 2006年10月06日 01:43
この時代の文明国では、自閉症も統合失調症も、神様の子にはなれない。
そうすると、療育・治療ってことになるんだろうね。それが良いか悪いか
(そんな単純じゃないけど)は、教育学や心理臨床学や医学の領域外の問題。
たぶん、メタ教育学やメタ心理臨床学やメタ医学の問題なんだと思います。
「メタ」がつかないほうは、とりあえず、
「良い」ってことにして進んでいかなきゃいけない。

私は自閉症児の行動療法をやってるから、結構複雑です。
行動療法やって、メタ行動療法やって、行動療法やって…。
社会参加できないと、政治的にも経済的にも弱者になるのが、今の世の中でしょ?
「社会を変えるよりは、個人と、その周りの限られた環境を変えるほうが、
 早くそれなりの効果を得られる」って思うんだよね。
でも、社会がこのままでいい気はしないし、昔に戻るのがいい気もしない。
Posted by あい at 2006年10月06日 01:44
ただ、これだけは言えるんじゃないかと思うのは、
教育学も心理学も精神医学も知らないで、
教育改革だ、特別支援教育だっていうのはおかしいんじゃないかってこと。
これ以上書くと、政治批判になりそうなのでやめとくけどね。

長々と失礼いたしました。
一度に投稿しようとしたら、「文字数が多すぎます」だって(笑)

勉強にボランティアに美術展に…充実した日々のようでなによりです。
では、またね。
Posted by あい at 2006年10月06日 01:46
>あい
おぉ〜久しぶり。日々元気に活動しております。
てゆか、ROMってたんだ…そっちに驚きだわw 
一体誰まで閲覧しているんだろう?

長い投稿ありがとう。しっかり読んだよ。

たぶんタイの話のようにどこの国も社会参加することを当然と考えているんだよね。
だから最初に書いたような家族か社会のどちらで管理するという視点ではなくて、障碍のある人を人間とみるか否かという視点の方が本質的な気がする。
人間ではないから家族で隠すように抱えて、それが結果的に家族によるゆるい?管理になるんでしょう。
日本でいえば座敷牢が思い出される。
逆にその人たちを人間としてとらえれば社会に参加するのが当然なわけで、ではどうしよう?と考えた先に、管理的要素が強くなるけれども効果的な教育をするのでしょう。
Posted by ひろただ at 2006年10月09日 22:47
こう考えると後者の方が断然良いけど、おれはその人たちにある意味で無理をさせてまで社会参加させる意義を考えていくことがやっぱり重要だと思う。
こう考える理由の一つとして個人的だけどおれが人に何かを強制することが苦手だということがあって、メタがつかない精神医学や心理臨床をやりたいわりに単純に「良い」って割り切れないw
それがたぶん上で書いた管理的要素を含んでいることを常に見詰めていく姿勢に繋がっている。
おそらく意義の一つはあいちゃんが書いているように「政治的にも経済的にも弱者にしない」ことだと思うけれども。
そこのあたりは個人的にメタを追求していかなきゃいけないんでしょう。
Posted by ひろただ at 2006年10月09日 22:48
「社会を変えるよりは、個人と、その周りの限られた環境を変えるほうが、 早くそれなりの効果を得られる」 というのに同感。
前に国家公務員になって社会を変えたいと考えたこともあるけれど、無理だと悟ったw
結局は行動療法ではないけど、同じように個人と家族や小さいコミュニティぐらいを対象にした心理療法をやりたいと思ってる。
そこから効果はもう少し広い環境に徐々にではあっても広がっていくと思うし。
Posted by ひろただ at 2006年10月09日 22:50
ただ社会を変えられないからといって、個人を変えてしまう傲慢さ?におれは敏感でありたい。
書いたこととつなげれば管理する傲慢さも含まれるかな。
おれも今の日本の教育や医療といった政治に対して批判的だし、教育学も心理学も精神医学も知らないで、 教育改革だ、特別支援教育だっていうのはおかしいと思う。
けれど同時に「社会的なことや政治的なことにあまり意識を向けずに心理臨床や精神医学、教育をやるのもおかしい」と思う。
確かに個人や周囲の限られた環境を変える方が楽だけれども、もし社会構造の方が何らかの悪循環を作っているならば
社会を変えることは絶対無理で、社会を自分の価値観で悪と捉えて変えようとすることも傲慢かもしれないけれども、
少なくともその社会構造を見つめて考えていく姿勢は臨床家や教育家も持ってなきゃいけないと思う。
Posted by ひろただ at 2006年10月09日 22:51
まとめていうと個人、周囲の限られた環境、さらに広い社会構造をバラバラにして集中して見る視点と全体の連関を見る俯瞰的な視点が大切というありきたりな結論になるけどw

いやー、おれも思った以上に長くなってしまった。
他の人を含め、最後まで読んでくれて、ありがとう。
では、また。
Posted by ひろただ at 2006年10月09日 22:52
丁寧なお返事ありがとう。

社会性・規範を身につけさせるために管理する一方で、
「ありのままが大事だよ」と言ったりもする。
そういう教育や治療のダブル(マルチかな…)スタンダードを、
なくすことはできないけれど、意識することで、
少しは倫理的になれるのでしょうね。
こうすれば、よい人が育つ、よい社会ができる、よい世界になる…
ということを信じては疑うことが大切なのかな。一人二役で。

「社会構造を見つめて考えていく姿勢は臨床家や教育家も持ってなきゃいけない」
同感です。
Posted by あい at 2006年10月11日 02:07
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