2006年12月08日

メラニー・クライン入門

メラニー・クライン入門


おそらく対象関係論の最早期の最も重要な人物メラニー・クラインの理論および概念を簡易にまとめた本。クラインはフロイトのようにだいぶ理論の変遷もあるので、時代によって論文で取り上げられていることがバラバラで全体像をつかむことは難しいらしい。そのクラインの業績をまとめて理解しやすく読めるのが本書。
読んだ印象は「鋭い」という感じ。いわゆる妄想分裂ポジション、抑うつポジションは現在の理解とあまり差異はなく、クラインの洞察力のすごさを感じさせる。しかし、なんといっても本書の特徴はあげられている臨床例ではないだろうか。単純に言ってしまえば、いきなりこんな解釈をクライエントにしてしまうんですか、という強い印象を受ける。幼児だろうが成人だろうが、ペニスや乳房など器官に結びつけた解釈をすぐさま出している。まさにhere & nowという感じ。もちろん本書でも述べられているが、クライニアンといえどもまず外的な状況を考慮に入れた後で精神内界の解釈、転移解釈を行うそうである。
また乳児がとても壮絶な世界に生きていることが著述され臨床例もあげられているが、ウィニコットなどを読んだ後に読むとなんとも乳児が病みすぎているような印象を受ける。安全な世界で穏やかに過ごす乳児は描かれておらず、常になんらかの不安を感じている乳児が描かれている。本書では不安な世界を描き出すことで安全な世界にも当然のように目を向けることができると書かれてはいるが。
本書を読むと、いわゆるクライニアンに対する批判も理解できる。とにかく転移解釈によって立ち、治療者が作り出す空間や環境を整えることは考慮に入れない、病的な乳児ばかりを扱ったための乳児像であり健康な乳児のもっと安全で穏やかな世界を理論化していない、などなど。もちろんこれは本書が出た当時のクライニアンの理論であって、現在のクライニアンはもう少し変化しているのだろう。特にビオンが投影同一化を介した母親と乳児のコミュニケーションを概念化したことは多大な影響を与えていると思われる。ビオンから強い影響を受けていることを公言している松木先生の「対象関係論を学ぶ」などの書物で描かれている臨床例はもっと自然で上記のような荒々しい鋭さとは異なった洗練された鋭さを持っている。
しかし、ビオンやウィニコットなどクライン以後の重要な人物の理論を本当に理解するためにはその源泉であるクラインの理論を知る必要があるだろう。その意味でも本書には多大な重要性が付されていると思う。
posted by hiro at 19:52| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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